正気の保ち方
西部 邁/新野 哲也著、光文社。
ネット上で調べると、発行年月は1992年5月と出ますが
そんなはずはありません。1990年以前に発行されていたと思います。
内容はほとんど憶えていないのですが
約20年前、この本をある人にもらいました。
本をくれたのは、88年末に中途採用で入社してきたTさんでした。
営業マンとして採用され、おにく同じ営業チームに配属されました。
博識で頭の回転が早く、弁も立つTさんはおにくよりも2歳年上。
元アパレルメーカーの営業職から、求人広告の世界に転職してきました。
しかし、Tさんは事あるごとに上司と対立し、いつも
禅問答のような口論を繰り返していました。
上司とTさんが犬猿の仲となり、さらに上司の役員が仲裁に入り
おにくも個室に呼ばれて意見を求められました。
役員:TとH(上司)の関係がこじれてるのは知ってるな?
おにく:はい。
役員:おにくはどう思う?
おにく:Tさんがおっしゃることも間違いじゃないと思います。
でもHさんも間違ってないと思います。
役員:それで?
おにく:Tさんの話を聞いていて、私が違和感を覚えるのは
うまくいかない理由が商品とか値段とか、営業方法など
自分以外の何かのせいだというところです。
必死でやった結果うまくいかないのか、屁理屈の言い訳なのかは
Tさん自身が一番よくわかっていると思います。
Tさんを陥れようとか、上司を庇って点数稼ぎしようなどという意識はなく
思っていた通りのことを役員に言いました。
役員:おにく、ついこの前入った新人と思ってたけど
おまえも成長してるんやな。
それからしばらくして、Tさんは退職しました。
Tさんとは在職中よりも退職後に親しくなりました。
Tさん:おにく、君はどうしてバカみたいに働くんだ?
おにく:え?なんかおかしいですか?
Tさん:君は会社に都合よく使われているんだぜ。
ハードルの高い目標与えても、君は必死になって達成しようと
するだろう?それで達成したらまた会社は目標を上げる。
そうしたら君は、また寝食を惜しんで働く。同じ給料でさ。
俺にいわせれば究極のアホだわ。
おにく:でもいろんな社長に会えて、人生の転機にも立ち会える
奥の深い仕事だと思うんですよ。
Tさん:あ~やだやだ。だからそれがアホだっつうのよ。
うまいこと会社に刷り込まれて、身を削って働いて。何が残るの?
おにく:…あんまり深く考えてませんけど、今まで中途半端だったから
仕事ぐらいはがんばらないとただのカスになる気がするんです。
Tさん:おまえは世間知らずだなぁ。求人広告やってるんだから
世の中もっとラクで楽しい仕事がいっぱいあるのはわかってるだろ?
おにく:ええ、うらやましいなと思うことはありますよ。
いつかウチの会社もこんな風になりたいって思います。
Tさん:転職しないか、って誘われることもあるだろ?
おにく:ええ。
Tさん:給料も上がるんだろ?
おにく:ええ。
Tさん:転職しちゃえよ。
おにく:でも、人が足りなくて困ってる会社へ営業してるんだから
誘われて当然ですよね。君でないとどうしてもダメだ、と言われない限り
そんな気にはなりません。
Tさん:あ~もう、聞いてられないわ。新卒採用してる会社の思うツボだよ。
24歳の頃のある週末に、Tさんが住むJR岸辺駅近くの部屋で
こんなやりとりをして
君はこれを読んで
もっと世の中について勉強しなさい
とTさんが手渡してくれた何冊かのうちの一冊が
『正気の保ち方』でした。
その他の本のタイトルは次の通り。
- 悪魔の飽食/森村誠一
- 続・悪魔の飽食/森村誠一
- 悪魔の飽食(第3部)/森村誠一
- 中国の旅/本多勝一
- 新編三光 中国で、日本人は何をしたか/中国帰還者連絡会編
- 母は枯葉剤を浴びた/中村梧郎
- 生体解剖 九州大学医学部事件/上坂冬子
- ヤマザキ、天皇を撃て/奥崎 謙三
後日、これらももらいました。
- 春の雪(豊饒の海・第一部)/三島由紀夫
- 学生との対話/三島由紀夫(Tape)
- ゆきゆきて、神軍/原一男監督(Video)
- ワーグナー:管弦楽曲集/W・フルトヴェングラー(CD)
Tさんは建築資材商社に転職し、大阪営業所長として
働いていましたが、おにくが東京へ転勤して数年後
実家の北九州へ戻ったと聞きました。
年賀状だけは送り続けていたのですが、10年ほど前に
Tさんのお母様から
もうTには連絡しないでください
というハガキが届きました。その理由は書かれていませんでした。
Tさんは世間知らずのおにくに何を教えようとしてくれたのか?
もう一度会って聞いてみたいです。
あ~もう、君はまだそんなこともわからないのか!
と嘆かれそうですが。
最近のコメント